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「なぜ中国人は財布を持たないのか」2017年10月初版 読後レビュー

中国に関する本を読み終わったものからレビューする記事。

今回の本はこちら。

 

「なぜ中国人は財布を持たないのか」

850円(税別)

2017年10月10日初版

中島恵著

 

目次
  • どうして日本人はまだ現金を使っているの?
  • 発展が早いのは、遅れていたから?
  • 「不信社会」をスマホが変える
  • 中国人は情報統制されている?
  • 金の亡者は消えたのか?
  • 日本の経営者の教えに涙を流す
  • 「パクリ天国」に困惑する人々
  • 結婚も出産もしない若者たち
  • 「異質な隣人」が台頭する恐怖
  • 日本と中国という合わせ鏡

 

 読後レビュー

ただのスマホ決済の話ではなかった。ただ単にスマホ決済が進んでいる、すごいで済ますのではなくて、なぜここまで普及しているのか、その国で生活をしたことがある人にしか気づかないような背景が分かる本。

 

この背景を見ると、逆に日本は早く発展しすぎてしまったのかなとも思う。

 

この話は地下鉄にも似ていると思う。

東京の地下鉄にはホームドアがないことも多いけれど中国の地下鉄でホームドアがない駅を見たことがない。

はじめからつけるのは簡単だけど、普及してしまったら後から付け足すのは大変。

 

発展が早いのは、遅れていたから?

あっという間にスマホ社会、あっという間にキャッシュレス社会、中国の発展スピードは凄まじいというイメージが先行しているけれど、「発展せざるを得なかった」背景があったことは意外と知られていない。

 

私が北京に住んでいた2016年は地下鉄のチャージなどを除いて完全にキャッシュレス社会だった。

 

そんな北京生活時代の忘れないエピソードを。

 

私は現地の駐在日本人たちが意外とウィーチャットペイを使っていないことに疑問を感じていた。会費も現金で集めるし。

なんでwechatpayを使わないのか聞いてみると、「なんか、こわいから」とのこと!!!これは新しいものはすぐ使ってみたい私にとっては衝撃的だった。スマホ決済を使わずに中国で生きていることも驚きだった。

 

中国人から言わせると、現金のほうが信頼が置けなくて、不安なのに。

 

そんな中、タクシーに乗る機会があった。

 

数十元の運賃で、100元をだす。

コンビニでお釣りのなかの50元を使おうとすると偽札だったのだ!

なるほど、近くで見ると明らかに緑が濃いし偽物だとわかるけど暗いタクシーの車内では気づかなかった。

 

悔しくても渡してしまった現金は戻らないし、走り去ったタクシーを特定することもできない。

 

これを解決してくれたのがdidi。

行き先も伝えなくていいし現金も取り出さなくていいし、私はdidiしか使ってなかった。

 

本当にこればっかりは文化の違い。

紙屑みたいな人民元と、日本円の現金じゃ重みが違う。


「不信社会」をスマホが変える

これも上記のタクシー事件の話とつながる。

そもそも相手を信用していないからこそ芝麻信用のようなサービスが伸びて来た。

 

今では信用度数●●●点以上でデポジット金無料なんてサービスもたくさん見かけるし、その信用というのがネット社会だけではなく実生活にも結びついているものだから、変に人を騙したり悪いことができない。ダイレクトに自分に不利益が返ってくるようになった。逆に、信用を貯めると自分にとってもメリットがあり、バカを見なくても済むようになった。


中国人は情報統制されている?

中国にいるとき、はじめこそ不便に感じたものの一気に感じなくなった。なんといっても自媒体の存在。個人が運営するメディアの影響力の強さ。これだけ見るとかえって日本より情報に溢れてるんではないだろうか。日本の個人メディアは割と閉鎖的な空間にコアなファンがいるイメージだけど、中国の個人メディアはどちらかというとパブリックだ。Wechatの配信記事なんて、1記事の広告記事配信をお願いするのに数万元かかったりする。


金の亡者は消えたのか?

本当に最近爆買いを見かけなくなった。この前8月に香港に行ったとき、香港の薬局屋で久々に爆買いを見かけた。ついに高鉄が香港と繋がったし、ますます爆買いは減るだろうな・・

 

本当のお金持ちは爆買いなんてしない。それは薄々気づいていた。

爆買いをしている人はむしろ生計を立ててる方だ。本当に手軽に参入できるから、周りの友人もやってて、Wechatのモーメンツに投稿が上がってくるたびにあ、あの子もはじめたんだ。みたいな感覚。

 

一方お金に余裕がある(娯楽に使う余裕がある)人は、経験を買うようなお金の使い方をしていて、やたらDIYだとかに興味をもっていた。ここ最近カフェが流行っているのも納得できる。


日本の経営者の教えに涙を流す

それでも中国の友達と話していると自分の国の文化に焦りがあるのは伝わってくる。

まだまだ発展してないよ。という自己評価をする人が多かった。

中国に降り立つと、街の至るところにスローガンが掲げてあって圧倒されるけど、真に受けている中国人がいるかどうかは謎。

 

韓国にいたときもそうだったけど、バイトしながら夢を追うことを許される日本が羨ましいと言われたことがある。

 

芸術や文化を許容する寛大さは、たしかに日本の方が自由かもしれない。


「パクリ天国」に困惑する人々

中国人だからといって海賊版にあふれているだとか、パクリしかないだとか、そんなイメージも中国にいくと覆される。

もちろん多いのは多いけれど、むしろ本物を求めている人の方が多くて海賊品が淘汰されていくイメージ。

2013年2014年くらいは音楽が聴き放題だったのに、そんなアプリはもう本当になくなってしまった。私はテイラーのアルバムとBIGBANGのアルバムをQQ音楽で購入した。そう、購入しないと聴けないのだ。


結婚も出産もしない若者たち

私は公園で募集してるのをみないけど、お見合いのために帰国した人を実際に知っている。結婚に対する考え方とかスタンスがシビアだ。20代後半にもなると未婚の女友達と集まると誰々が結婚したとか、自分はしたいようなまだ早いような、みたいなどっちつかずな会話をするけど(少なくとも私はしてる。。)中国にいたとき友人同士で結婚したいね~というふわふわした会話をしたことがない。するときはする、しないときはしない。割り切ってる感じだった。


「異質な隣人」が台頭する恐怖

私は中国にずっと関心を持っていた方だとおもうけど、それでも初めて中国に訪れる2015年まで、天安門の前を自転車が走る、あのイメージのままだった。

実際に生活してみて日本で中国の話をすると、未だにテンプレ化した先入観に遭遇するけれど、一歩足を踏み入れてみるとテンプレの中国人なんてほとんどいなくて、自分とはちがう背景でいろいろな事を思いながら育ってきたんだなぁと、はっとする。

お互い成功事例、失敗事例共有しながらもっと交流していけたらいいよなー。

 

▼関連読後レビュー

割と最近の中国人の等身大がそのまま分かると思う。

中国向けにサービスしたい方なんかは、市場調査をする前に、ぜひこの本を読んでみてほしいです!