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「未来の中国年表 超高齢大国でこれから起こること」2018年6月初版 読後レビュー

中国に関する本を読み終わったものからレビューする記事。

今回の本はこちら。

 

「未来の中国年表 超高齢大国でこれから起こること」

800円(税別)

2018年6月20日初版

近藤大介著

 

目次
  • 2018年 四二一家庭:中国でも「人口減少時代」始まった
  • 2019年 積分落戸:首都・北京の人口もごっそり減る
  • 2020年 空巣青年:適齢期の男性3000万人が「結婚難民」と化す
  • 2021年 脱貧攻堅:中国共産党100周年で「貧困ゼロ」に
  • 2022年 学歴通脹:大卒が年間900万人を超え「大失業時代」到来
  • 2023年 消費革命:世界一の経済大国となり中間層4億人が「爆消費」
  • 2024年 中国式離婚:年間1200万人離婚時代がやってくる
  • 2025年 双創:「中国製造2025」は労働力減少を補えるか
  • 2035年 竜象打杖:総人口が減少しインドの脅威にさらされる
  • 2049年 未富先老:建国100周年を祝うのは5憶人の老人

 

読後レビュー

今回は中国の新興企業にフォーカスした本ではなく、「中国そのもの」にフォーカスした本。 人口は嘘をつかない、を軸に人口統計から建国100年にあたる2049年までの中国の様子が予測されている。

新興企業の動向ばかりを追いがちだけど、政治や人口から見た視点も通ずるところは同じで「中国で今起きていること(=問題だと思われていること)」「これから起こること(=問題に対するアプローチ)」に対して理解が深まる本。


中国で今起きていること

タイトルにもあるように中国でこれから起きようとしていることの発端は1979年~2015年の一人っ子政策にある。これまでに経験したことのないような高齢化社会の到来、人口減少、男性余りが起ころうとしている。そして、それを見据えてAI立国、アフリカ外交、農村改革などが動き始めている。今の中国が描く2049年、建国100年の姿と一体。

 

1.2018年~2020年:人口問題

私が住んでいた2016年こそ高齢化社会が近づいてきているなんて様子は感じられなかったけど、友人は例外なく一人っ子だった。そして子どもがキラキラしているというか、立場が強いというか、日本でよくあるような「騒がしくしてすみません・・」のようなのがなかった。

印象的だったエピソードをいくつか。親しくさせてもらった知人の中に81年生まれの男性がいたのだけど、その人には6歳の一人娘がいた。一家で北京の郊外に住んでいたけど、娘が小学校に上がる際、小学校は北京中心部に通わせたいとのことで入学に合わせて一家丸ごと引っ越ししてしまったのだ。。!小学校なんて近所のところに通うのが普通じゃないの?と思っていた私からするとかなり衝撃的だった・・。

しかも、81年ということは一人っ子世代が一人っ子を生んでいることになる。2015年解禁だから2人目を設けることはできるけど、1人目に全力をかける周りの若いパパママを見る限り2人目という選択肢はなさそうだった。

本にもあったけど、解禁したからといって浸透するわけではないし、いまやパパママが一人っ子育ちなのだから、子供は一人が当たり前、できるだけ良い教育をさせてあげたいという認識はそう簡単に変わるものではないと思う。

 

そしてもう一人、北京で1か月ほど同じ家に住んでいた90年生まれの男性(髪を青く染めていた)はライブ配信、ときどきダンサーとカメラマンをしながら生計を立てていた。まさにいろいろな本や記事にでてくる中国の若者という感じで、明け方寝て午後に起きるという驚異の生活リズムだった。

中国の高校生と言えば朝早く学校に行って体操をして夜遅くまで自習して・・堅苦しい生き方を強いられるのかなあという勝手なイメージがあったけど、彼に出会って変わった。今の中国では個性を武器にして生きていくことができるんだなと実感した。

 

そう、あとは友人たちと起業して広告会社を運営している90年生まれの女性とか・・

 

結局自分の話が長くなってしまったけど、私が実際に出会った中国の若者の生き方のベースからも、一人っ子政策が感じられる。

 

2.2021年~2025年:内部改造

一人っ子政策によって高齢化・人口減少が起ころうとしていることは先述の通りで、それを見越して人口の分別をしようとしているように感じる。超高齢化社会は受け入れつつ、国全体の豊かさを底上げするには農村部を豊かにしないといけない。戸籍に点数を付けて、一線都市の質を保ちつつ、一線都市に出稼ぎにいけなくなった人が出稼ぎに行かなくてもいいような地方都市を作ろうとしているのかもしれない。アリババ率いる「農村タオバオ」がどんどんできているらしく、農村の特産物等が自力で販売できるようになり、農村にいながら自力で稼ぐ手段が徐々に生まれ始めている。(上海戸籍問題=外国に住む中国人は上海の戸籍を失う/は東京に住む上海の友人から聞いて、まさか~と思っていたけど・・)

北京にいるとき、本地人(元々北京にいる人)と出稼ぎに来ている人というのは外国人の私でも一目でわかるものだった。そのくらい職業分別ができてたけど、今後はそれまで出稼ぎ労働者が担っていた仕事をAIが担うようになるのかな。

高齢化社会につながる話だけど、一人暮らしの高齢者人口は都市部よりも農村部の方が多かったりと(子どもが出稼ぎにでるため)農村部の人口流出をどう防ぐかも向き合い続けないといけない問題。

地方都市の話で本の中でも触れられていた「雄安地区」についても少し。実は私が北京南部の郊外に住んでいたころからチラホラと「このあたりに空港ができるらしい」「このあたりは開発区になるらしい」という噂は聞いていたけれど、本当に北京・天津から100km南下した河北省雄安地区に北京副都心なる特区ができるという!深圳経済特区、上海浦東新区に続く計画とのことで、絶対行ってみたい。

 

3.2035年2049年:建国100年にむけて

2049年の建国100年の頃には一人っ子世代たちが還暦を迎える時代がやってくる。

比較的裕福に育ってきた人たちが老人の割合を占めるようになるとこれまでの消費の在り方がガラッと変わることが予測される。

政府の政策に中国人の倫理観が見え隠れするのも面白い。偽装結婚や離婚に抵抗がなかったりしたり、来世の幸福を根が合う宗教がなかったり。

内部の豊かさを底上げしようとしていたり、海外から若い労働力を獲得しようとしていたり。中国の存在感はどんどん増していくんだろうな・・

 

まとめ

人口というブレない軸で年表化されていて分かりやすかった。

これからの中国のことはもちろん、これまでのことや今起きていることも体系的に頭の中で整理される感覚。このような目に見えない情報を日本語でまとめ上げて発信できる人に感謝と尊敬の念でいっぱい!

 

読後レビュー

 

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