最近読んでいる中国に関する本を読み終わったものからレビューする記事。
今回の本はこちら。
「現代中国経営者列伝」
900円(税別)
2017年4月25日初版
高口康太著
目次
- 「下海」から世界のPCメーカーへ 柳傳志(レノボ)
- 日本企業を駆逐した最強の中国家電メーカー 張瑞敏(ハイアール)
- ケンカ商法暴れ旅、13憶人の胃袋をつかむ中国飲食品メーカー 娃哈哈(ワハハ)
- 米国が恐れる異色のイノベーション企業 任正非(ファーウェイ)
- 不動産からサッカー、映画まで!爆買い大富豪の正体とは 王健林(ワンダ・グループ)
- 世界一カオスなECは”安心”から生まれた 馬雲(アリババ)
- 世界中のコンテンツが集まる中国動画戦国時代 古永(ヨーク)
- ハードウェア業界の”無印良品”ってなんだ? 雷軍(シャオミ)
読後レビュー
前回読んだ「中国新興企業の正体」がスタートアップ企業に着目していたのと異なり、現代の大型企業にフォーカスを当てた本。
「中国新興企業の正体」2018年4月初版 読後レビュー - ごきんじょログ 中国を中心に隣国の語学やトレンドあれこれ
特にワンダグループなんて中国の至る所で目にするし代表の王健林もすごく有名だけど
(TVでもよく見るし)どうやって今のワンダグループになったのかは知らなかったので楽しみに読めました。
1社1社エピソードを残します。
1. レノボ
レノボが中国市場で成功した理由として「愛国主義・コストパフォーマンス・販売網」の3セットが揃ったこととして紹介されていたけど、この3セットはレノボ以外の他の業界・企業にも当てはまる的を得た表現だと思う。特にPC市場が下火になる中でレノボがスマホ市場でパッとしないエピソードの裏にはVIVO,OPPOの姿が見えてきて、まさに「愛国主義・コストパフォーマンス・販売網」があるなと思った。OPPOが日本に上陸して半年くらいたつけど、どうなったんだろうか。調べてみようと。
2. ハイアール
青島のハイアール。安い中国製の家電というイメージしかなかったけど、気づけば今や私の家の電子レンジも洗濯機もハイアール。ドイツのリープヘル社のライセンス契約を結びブランドを構築してきたこと、ライセンス終了後もハイアールブランドは確立された状態のままのところにしたたかさを感じた。中国企業がどんどん値下げする中ハイアールアだけは値下げせず品質のハイアールを確立したエピソードはどうして銀座の真ん中にネオン出してるのだろうという私の疑問がちょっと解決した気がした。青島のオンボロ工場にメスを入れて出来ただけあって青島の人たちの思い入れは特別だろうな。腐ってても真面目にやりつづければクリーンになっていくんだなと思わされるエピソードだった。
3. ワハハ
なんとも中国らしいというか。リスクを取って手を上げた人しか目立たないんだなと思うエピソード。ワハハも「愛国主義・コストパフォーマンス・販売網」が伝わってくる。販売店の保証金に利回りを付けたことなど、なんとも中国人のwin-winはよくできている。ダノンと裁判になった際も独立会社を綿密に作り上げて独自のスキームをつくっていたりと、またもや外国企業をうまく利用して抜け切るしたたかさを感じた。ワハハに限らずどの企業も外国製品が中国に入ってくる危機感がすごく伝わってくる。非常コーラが非常に気になる。
4. ファーウェイ
愚直で秩序のある集団というイメージ。ファーウェイ基本法というものがあり、毎年売り上げの10%を研究費用に回しているらしい。まだ未上場の会社で、社員で持ち株にしてモチベーションを維持していることと、45歳早期退職制度を設けて会社内の若さをキープしているところに秩序と工夫を感じた。
5. ワンダ・グループ
大連を代表する集団。「政府との距離感の取り方がうまいな」と思った。距離感が遠すぎるとあらゆる面で不利になるし、近すぎると汚職になるのが中国。網紅としてよく名を目にするが王思聡が息子だとは全く知らなかった。ワンダといえば映画館やショッピングセンター。中国の文化産業を追うにはこのグループの動きを追う必要がある。しかし王思聡が気になる!調べよう。
6. アリババ
本当にアリババのエピソードを読むと「信用をシステムに組み込むのが上手」だなーと思う。タオバオしかり、アリペイしかり。逆に言うと、どこで不信感が生まれるのかをよく理解してるんだなと思う。ネットでの信用を点数化して現代社会に反映させるというのはよく取り上げられていることだけど、テンセントとの闘い(もしかしたら勝ち負けとかの闘いじゃないのかもしれないけど)は持ってるデータ量をいかに社会に還元するかなんだと思う。ECサイト(アリババ)の持つデータと、チャットツール(Wechat)の持つデータ。(もはやひとくくりにできないけど)この膨大なデータの社会還元は日本で想像できないし、日本でも応用されていく気がするので、俯瞰した目で追えたらいいな・・。
7. ヨーク
動画ってまだ戦国時代なんだなと思った。たしかに数年前までは動画といえば优酷な感じあったけど(2017年になる年越しは北京の家で一人で优酷の特別番組みたな・・这世界很酷♪のフレーズ好き)気づいたらbilibili見る人がすごく増えてたり、正規ドラマが爱奇艺で見れたり。それがいわゆる第二次動画戦争というのをはじめて知った。私も日本のドラマはbilibiliで、韓国のドラマは爱奇艺で見てた。その上動画業界は版権をとにかく買うのような「焼銭モデル」でうまく利益化できるモデルが見つかっていないというのも知らなかった。日本と中国じゃテレビとのかかわり方や広告費の扱い方も違うと思うけど、モデルができたら日本が後追いするようになる気がするので、これも着目しておきたい・・
あとはソニーのPSPが海賊版コンテンツ規制した話。マイクロソフトがoffice海賊版を黙認したことでシェアを取ったように、シェアを取りに行くためにはグレーを黙認することも戦略の一つなのかと思った。
8. シャオミ
生粋のプログラマーが創った会社。こちらも「愛国主義・コストパフォーマンス・販売網」が揃ってるなと。(中国向けというより世界基準のグローバルでありたい感伝わってくるけど)雷軍の考え方がなんとも西海岸的と言うか、ハードウェア業界のスタートアップを取り囲んでシャオミエコシステムを作る構想が素敵。
かくいう私もシャオミの廉価版の紅米(red mi)にどんなに助けられたか。北京で紛失したiPhone6SE。そんな失意の底で上海に行かねばならず、上海陆家嘴の中国移動で799元(確か)32GBのスマートフォン買ったな・・・
2017年9月に韓国にいって驚いたのはシャオミの実店舗があったこと、Iotデバイスのデモが見れる店舗。看板には韓国語で「大陸の実力」と書いてあった。この辺りに中国のプライドというか、「愛国主義・コストパフォーマンス・販売網」の愛国主義を感じた。
まとめ
レノボの紹介で出てきた「愛国主義・コストパフォーマンス・販売網」の3点セットが妙に腑に落ちて、レノボ以降の会社にも当てはまることが多数だった。中国のためという大義名分が中国人には受けるのだろうし、広い大陸をいかに順序良く囲っていくかが経営者に試されてるのかなと思った。
▼関連読後レビュー